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2006/06/29 更新

基調講演2 「心のケア・家族のケア」
広島大学病院 医系総合診療科 助教授 佐伯 俊成
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 がんと診断される、転移・再発が起きる、緩和ケアが必要となるとき、患者さんやご家族は非常に強いストレスにさらされます。今日は、その際の心のケアについてお話しします。

 まず、がんについては家族に先に知らせず、患者さん本人にお伝えするのが原則です。患者さんがご自分の病気や体の不具合をどのように直していこうと思われているかを一番大事にするべきだというのが、がん情報の伝え方の基本です。ショックを与えたくないから本人に知らせないでほしいとおっしゃるご家族も多くいらっしゃいます。悪い知らせは聞きたくないという患者さんもおられます。しかし隠していると、治療の選択を誤る可能性が出てくるのです。

 がんは健康な人にはわからないほど大きな衝撃です。その衝撃を患者さんは受け入れていきますが、がんの進行度と心理的な回復に要する時間はまったく関係ありません。だからこそ、きちんとお伝えし、患者さんが動揺した時にどのように支えるかを考えるのが重要なのです。がんであることを知るとうつ病の頻度と自殺率が上がりますし、精神的に動揺しやすい方もいらっしゃいます。だからといって伝えないのが正しい選択ではありません。我々病院側の人間もご家族も、それを十分予想して対応していくことが必要です。

 一方、がんに対して前向きなら生存率が向上するとは必ずしも言えません。患者さんが前向きに過ごすのは難しいことですし、無理にそうする必要はありません。ただ、がんに対し「悲観・絶望」的では長生きできないという結果が出ていますから、そうならないための支援が必要です。特にご家族がうろたえると患者さんは不安が増します。解決のつかない問題にはどんどん周囲の力を借りましょう。患者さんは普段と同じ家族との会話に一番ほっとするので、特別な接し方をする必要はありません。患者さんのためにご自分のできることは何か、家族の中で誰が頼りにされているかを自覚し協力していくことが大切です。患者さんの言動は不安定になりがちなことを予想しておいて下さい。その上で患者さんがどういう援助を必要としているのかよく聞いて、その思いに添っているかどうかを常に確認しましょう。ご家族の価値観をそのまま押し付けては患者さんを苦しめるだけです。

 とにかく患者さんの話をじっくり聞くことです。がんにかかった方の闘病記、エッセイも大きなヒントになるでしょう。たとえご家族であってもがんになったご本人の気持ちを完全に理解することはできませんが、それに近づこうとするほどコミュニケーションがうまく進み、患者さんが絶望的にならずにすみます。ご家族が患者さんの気持ちをよりよく理解しようとすれば、それが患者さんに、より多くの援助を提供することになるのです。

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 ・基調講演1「がんの痛みと医療用麻薬」
 ・基調講演2「心のケア・家族のケア」
 ・シンポジウム1「がんの治療に必要な緩和ケア」
 ・シンポジウム2「秋田市医師会での取り組み」
 ・シンポジウム3「ホスピス病棟では」
 ・シンポジウム4「在宅ホスピスケア」
 ・秋田宣言

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