
モルヒネは、薬の区分として「医療用麻薬」と呼ばれます。「麻薬」と聞くと、心理的に抵抗を感じる方がいらっしゃるようですが、モルヒネは最先端の医療現場で使用されているとても有効な鎮痛薬の一つになっています。がん疼痛治療の鎮痛薬として医療用麻薬が使用される場合は、患者さん自身に痛みがある状態のため、麻薬の依存性や耐性が抑えられています。がんの腫瘍が手術で取り除かれたり、抗がん剤で小さくなったりして、がんの痛み自身が弱くなった場合は、鎮痛薬をやめたり、量を減らすことが可能です。鎮痛薬をやめるためには適切な方法があり、やめるまでに一定の期間が必要になります。ですから、麻薬中毒になったり、廃人になったりということはありません。
最近では、モルヒネとは異なる新しいタイプの薬として、フェンタニルやオキシコドンが日本でも使用できるようになりました。これらの医療用麻薬を使用する目的は痛みをやわらげることにあり、使用する量が多いからといって病状がより重いというわけではないのです。
また、モルヒネを使用しても効果のない痛みに対して、モルヒネが使用されることもありません。
医療用麻薬は、使い続けると効果がなくなるということはありません。濫用目的に使用される違法な麻薬では、いつも同じ快楽の効果を得ようとすると量を増やしていくことになってしまいます。しかし、痛みのある人が医療用麻薬を使用する場合は、鎮痛効果がなくならないということが証明されています。ただし、病状の経過によって痛みが強くなった場合には、薬の量を増やすことが必要になります。
医療用麻薬の麻薬中毒のイメージは、昔のアヘンや覚せい剤の濫用と同じように考えられているようですが、医療用麻薬を使用しても快楽を得ることはできません。
麻薬中毒とは、薬がほしくてたまらなくなったり、極度の不安になったりする依存症状のことです。しかし、医療用麻薬を使ってもこのような状態になることは決してありません。
医療用麻薬の副作用として、薬の教科書にも「呼吸が抑制されること」や「意識の低下」などについての説明があります。しかし、これらの副作用は痛みのない状態で実験的に薬の量を増やしたときの副作用です。実際に、痛みをとりのぞくことができる薬の量を用いて、医師が患者さんをきちんと診察しながら治療を行う範囲では、このような副作用が起きることはありません。ただし、患者さんの体調の変化(腎臓や肝臓の機能低下)によってはこのような副作用が出る場合もあるので、痛みの治療中は必ず医師の定期的な診察が必要です。
医療用麻薬を使用しているときには、眠気やあたまがぼーっとするという症状があらわれることがあります。これは、薬の治療を始めたばかりの頃には比較的多くみられる症状ですが、徐々に安定してなくなっていきます。しかし、これらの症状がいつまでも続いたり、考えがまとまらなくなったり、頭がぼんやりするなどの症状がまれにみられる場合があります。これは、多くの場合、全身の衰弱が進んだ人にあらわれやすく、また医療用麻薬以外の薬が原因となっていることもあります。
ある種の薬を使用しているときに、その薬の効果がきれることに精神的な不安や恐怖を感じたり、どうしてもその薬を手に入れようとする行動をおこしたりすることを「精神依存」といいます。しかし、医療用麻薬をがんの痛みの治療に使用してもそのような依存症状を引き起こすことはありません。痛みが弱くなったり、完全になくなった場合には、医療用麻薬の量を減らしたり、やめたりすることも可能です。ただし、自分の判断で薬を急に中止すると、自律神経のバランスに影響を与える(発汗や動悸などの症状がでる)ことがありますので、薬を中止する際には必ず医師や薬剤師の指示にしたがってください。